函館地方裁判所 昭和43年(タ)5号 判決 1969年1月13日
主文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「原告を本籍北海道亀田郡戸井村字釜谷一五六番地亡橋崎貞市の子として認知する。訴訟費用は国庫の負担とする。」との判決を求め、請求の原因として、
一、原告の母石橋たきは、昭和三六年八月、訴外佐藤吉太郎夫妻の媒酌により、請求の趣旨記載の橋崎貞市と事実上の婚姻をなし、爾来同人と同棲を続け、同人以外の男子と情交関係をもつことなしに懐妊して、昭和三八年五月一三日に原告を分娩した。従つて原告は、貞市の子にほかならない。
二、ところで、貞市が昭和三八年一月一六日に死亡しているので、検察官を被告として、原告を貞市の子とする認知の裁判を求める。
と述べ、法律上の見解として、要旨「本件訴は貞市の死亡後五年以上経過してから提起したのであるから、民法第七八七条但書にふれる疑もないではないが、(イ)内縁の妻がその期間中に懐胎した場合には、内縁の夫が右懐胎児、出生子の父と推定されること(最高裁昭和二九年一月二一日判決、民集八巻一号八七頁参照。尤も、右判決は父性推定の趣旨を立証責任負担の問題として意義づけているのにすぎないが……)、(ロ)認知の裁判に形成判決的性格が残存しているにしても、事実としての親子関係、即ち自然的血縁関係の存在を確定することを本義とするのであるから、少くとも右のごとく母の内縁の夫との関係で父性の推定を受ける子についての場合には認知の裁判は本質的に確認判決であるとみなければならず、従つて出訴期間の設定は右の本質に副わない不当な制約であること、の二点からして、本件には前記但書の適用はないと解するのが相当である。」と陳述した。
証拠(省略)
被告は、訴却下の判決を求め、本案前の主張として、「本件訴は出訴期間経過後に提起された不適法なものであるから却下を免れない。」と述べ、請求原因事実に対する答弁として、「訴外橋崎貞市が昭和三八年一月一六日に死亡したことは認めるが、その余の事実は知らない。」と述べた。
証拠(省略)